2022年12月26日のAM9:30、合格発表がありました。合格でした。2020年に学科を一発独学で突破したものの、2020年・2021年ともに製図試験でランクⅣ(最低ランク)で落ち、2022年にやっと合格することができました。アメリカで構造設計を行うためのエンジニア資格(PE civil)も並行して勉強していましたが、(異なる分野を比べるのもおかしいですが)圧倒的に一級建築士の方が多くの勉強時間を要し、難易度の高い試験です。以下は勉強のしかたのメモです。一つの参考にしてください。
学科の話
2020年度の試験では学科を独学で98/125点(計画13/20, 環境15/20, 法規26/30, 構造26/30, 施工18/25)で合格しました。この年の合格基準点は88/125点(各科目次の点数未満だと足切りされます: 計画11/20, 環境10/20, 法規16/30, 構造16/30, 施工13/25)でした。毎年新しい傾向の問題がいくつも出ることは確かですが、過去問を解くだけで対策としては十分です。過去問を平成10年(1998年)の分(法規は古すぎる問題を除く)から全て解いて、暗記しました。
法規の対策は特殊で対策前は取っつきにくそうですが、結局は法令集を片手に過去問を解きまくるだけです。法規だけは試験時間が足りないので、全問題の1/3くらいは暗記だけで正答にたどり着けるように問題と答えの関係を頭に入れておくことが重要です。残り2/3の問題に時間を割くことができるようになるので。
予備校には通っていませんが、S社の模擬試験だけを受けにいきました。得点は70点台後半(90点くらいが合格ラインであることを考えると悲しい点数)でした。答案返却のときに営業のおじさんに「これじゃあ受からないよー笑」煽られ倒され、悔しい思いをしましたが、あれが発破となり、残り1か月の勉強に身が入りました。模擬試験は全体における自分の理解度がどの程度かを知るためにも受けておいて損はないです。
学科対策に関しては予備校に通う必要はないと思います。きちんと自分を律して毎日学科対策に勉強時間をあてれば独学で合格は十分に可能です。
ここからは愚痴です。建築設計に求められる要求は年々高度化しており、設計にかかわるあらゆるスキルを全て暗記することははっきり言って無茶です。PE civilは一級建築士の構造の学科試験に比べてはるかに高度な計算が求められ、80問の問題を8時間かけて解くハードな試験です。ですが、試験中に参考書のebookを用いることができます。問題を見てどの公式を使えば良いのかがわかっていれば、公式の係数などを暗記していなくてもebookを用いて問題を解くことができるようになっています。こちらの方が、実務にも即していてより良い試験運用だと思います。
製図の話
過去の製図の試験問題や解答例を見て、製図を独学で合格することは無理だと直感していたので、予備校に通うことにしました。1年目はTAC予備校の通学タイプ。2年目は日建学院の通信タイプ。3年目は全日本建築士会の通信タイプでした。3年目で合格したので全日本建築士会が一番よかったかというと、そんなことはありません。個人的には学んだことの多かった順番で日建学院>全日本建築士会>TAC予備校でした。
(1年目、TAC予備校の通学タイプ、試験結果:ランクⅣ(延焼ライン書き忘れ))
- TACの良いところ:教科書のクオリティはそこそこです(でも日建学院の方がずっと高いです)
- TACの悪いところ:学生の質が悪いです。大あくび・講義中の昼寝・清潔感がないなど、一緒に勉強するのが嫌になります。学生と仲良くするのが目的ではありませんが、不快感を催すほどの人がいると明らかに自分の勉強にもマイナスになります。先生の指導に自信が見られず、即日返ってくる添削結果もふわっとしています。添削結果からどこが悪いのかはわかりますが、自分がどの程度合格ラインに近づいているのかがわからないまま試験を迎えてしまいました。その場で添削指導してくれることは通学タイプの大きなメリットですが、時間がかかってでも、丁寧に添削指導してくれるところを強くお勧めします。
- 試験前日にモンスターハンターを購入してプレイしてしまい、完全に油断しました。隣地境界線からの延焼ラインを描くことは必須ですが、試験では何故か(防火上有効な公園と混同して)描かなくて良いと勘違いしてしまい、隣地境界線からの延焼ラインを描かずにランクⅣ。
(2年目、日建学院の通信タイプ、試験結果:ランクⅣ(道路高さ制限不適合))
- 日建学院の良いところ:教科書のクオリティが最高です。エレベータや階段の寸法や、基礎の形式などが細かく説明されています。3年目に気合を入れ直して勉強するときにも日建学院の教科書はずっと重宝していました。3年目に出題された問題は地盤情報から杭基礎で基礎を設計する必要があるという新傾向があったのですが、日建学院の教科書に目を通していたので杭基礎の図を描くことができました。また、添削も非常に丁寧です。採点基準や減点項目を細かくリスト化した採点表を添削結果に添付してもらえるため、自分の設計・作図の欠点を詳細に把握できます。
- 日建学院の悪いところ:特に思いつかないです。
- 対策は怠らなかったつもりでしたが、知識に穴がありました。道路高さ制限におけるセットバック距離の算出において屋外階段を「無視して良い」と勘違いしていました。今まで対策した演習問題では隣地側に屋外階段を突き出して計画するものが多かったのですが、道路側に屋外階段を設ける際には道路高さ制限への適合を別途確認する必要があることを理解していませんでした。せっかく1時間半余裕をもって図面を仕上げられたのにランクⅣ。
(3年目、全日本建築士会の通信タイプ、試験結果:ランクⅠ(合格))
- 全日本建築士会の良いところ:添削結果は丁寧だと思います。ゾーニングを改善するための代案も図面上に描いてくれました。採点リストを用いて機械的に採点を行う日建学院とはまた違ったアプローチで、添削から新たに学ぶことが多かったです。日建学院と全日本建築士会でどちらの添削方式が良いかというと、日建学院をお勧めしますが、新たに環境を変えたいという意味で全日本建築士会に切り替えた私の選択も間違っていなかったと思います。
- 全日本建築士会の悪いところ:教科書は薄っぺらいですのでほとんど開いていません。
- 過去2年間やっていなかったエスキス特訓をやりました。作図はせず、問題を読んでA3の方眼紙にエスキスまでを仕上げるエスキス特訓。全日本建築士会の終盤の課題においてもなおゾーニングについて指摘事項が多く、私のエスキスが下手であることに3年目にして気づきました。作図スピードはこれまでの勉強で十分にあったので、最後の1週間をエスキス特訓と(日建学院の教科書を用いた)法規の再確認に切り替え、ランクⅢやⅣに陥らないようにすることを心掛けました。この年の事務所ビルの設計課題は要求される文章・イラスト量が非常に多く、階数・延べ床面積の未指定などの新傾向が見られたため戸惑いましたが、30分程度余裕を残して作図を完成させ、見直しに時間を割り当てることができました。
- 思い当たるミスとして、幅3mの独立フーチング基礎の下に杭基礎を4本ずつ取り付ける設計としたのですが、杭の直径を1mと太く設計してしまいました。杭の種類によりますが、およそ杭径の2倍以上の間隔を設けなければならないので、杭径をもっと小さくしなければ施工の基準に適合しなくなります。
製図試験に便利なグッズ
- 薬指と小指だけを通す手袋。図面を汚さないために。
- バンコの三角定規。三角定規と柱を描くためのテンプレートが一緒になっていて、作図時間短縮に貢献。
- アスカ計算式表示電卓C1242W。入力した計算式が表示されるので、計算間違いに気づきやすい。
- Pentel PG1005 GRAPH1000。軽すぎず重すぎず、持ちやすいシャーペン。しかも安い。
- Hi-uni HB 0.5とHi-uni B 0.7。シャー芯。私は筆圧が強かったので、メイン作図用の0.5mmの芯の濃さはHBが最適でした。芯が折れてストレスに苛まれる心配もありません。柱を描くときだけ0.7mm Bを使っていました。柱がはっきりと描けていると図面の印象が良いので。
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